難燃ウレタンフォーム
目次
1.難燃ウレタンフォーム 2.難燃ウレタンフォームの種類 3.難燃ウレタンフォームの用途について 4.難燃ウレタンフォームの加工方法について |
1. 難燃ウレタンフォーム
1) 難燃ウレタンフォームについて
難燃ウレタンフォームとは、ウレタンフォームの中でも炎に対する耐性が高く、燃焼時の煙や有害物質の放出が少ない特徴があります。
難燃ウレタンフォームは、厳しい難燃規格の求められる自動車・各種車両・航空機部品での使用にとどまらず、近年ではデータセンターのラック下通気口を埋めるための建材としても利用されています。
主な特徴として以下のようなものがあります。
難燃性 | 火災時にも燃えにくく、炎が直接触れても燃え広がりにくい性質を持っています。 これにより、火災の発生・延焼リスクを低減し、建物の安全性を向上させることができます。 |
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2) 難燃規格とは
難燃規格とは、物質や製品が火災時における燃焼のリスクを評価するための基準や規格を指します。
具体的には、材料がどれだけ火災に対して耐性があるか、炎の接触や燃焼時の挙動、煙や有害物質の放出量などが評価されます。
基本的に、難燃ウレタンフォームの難燃性を判定する際、難燃規格というものが指標となります。
下記には指標としてよく用いられる規格をご紹介いたします。
① UL規格(試験法の名称:UL94)
このUL規格は、電気器具の部品として使用されるプラスチック材料の難燃性の等級を示すものです。一般的にUL規格の試験方法で評価されます。
燃焼性の分類としては、UL94HF-1、UL94HF-2、UL94HBFがあります。
試験片(150±1x50±1)を水平に保持し、38㎜の炎を60秒間接炎、標線間の燃焼速度および燃焼挙動により判定を行います。
UL94HF-1およびUL94HF-2、UL94HBFは、密度250kg/㎥未満の発泡材料で試験を行います。
- UL94HF-1
- 5枚1組の各試験片の燃焼時間:4枚までが2秒以下、1枚までが10以下
- 延焼時間:30秒以下
- 各試料の破損した長さ:60㎜以下
- 滴下物による綿着火:なし
- UL94HF-2
- 5枚1組の各試験片の燃焼時間:4枚までが2秒以下、1枚までが10以下
- 延焼時間:30秒以下
- 各試料の破損した長さ:60㎜以下
- 滴下物による綿着火:あり
- UL94HBF
- 【判定基準】:100㎜標線間で燃焼速度40㎜/min以下、または125㎜標線までに燃焼が終了する。
② FMVSS No.302(米国自動車安全基準)
自動車などの内装材料(シートクッション、シートベルト、ひじ掛け、床カバー、カーテン、その他全ての内装品)において、燃え広がりやすさを調べるために行う試験です。
産業資材の自動車や航空機の内装材に用いられる材料を対象として、水平状態における燃焼速度を測定します。
試験片を燃焼試験機内のU字型クランプにセットし、水平に保持させ、試験片の一端にバーナーで15秒間炎をあてる。
その後、10インチの標線間の燃焼速度を測定する。
【判定基準】
燃焼速度:100㎜/min以下
③ 鉄道車両用材料燃焼試験 A-A基準
鉄道車両用に椅子表地、詰め物、床材、内装材、断熱材など全ての材料が適用範囲となります。
【試験方法】B5判の試験片を45度に傾けた状態で保持し、所定の位置にセットした容器内にエチルアルコールを0.5cc入れ着火させる。
試験片を燃焼中と燃焼後に分けて調査し判定する。
④ マットレスの防炎性能試験基準寝具類等の防炎性能試験基準
ウレタンフォームを使用したマットレス(完成品)が適用範囲となります。
【試験方法】
- 45度メセナミン法 試験片を金網で45度に傾けた状態で保持し、所定の位置にメチレンテトナミンを固定し、マッチで点火し炭化長を測定する。
- 水平たばこ法 試験片を水平な台の上に置き、所定の位置に点火したたばこを置き、もう一枚の試験片を重ね、さらにその上に石渡パーライト板を乗せ、1時間後の炭化長を測定する。
【判定基準】
3個の試験体について、最大の燃焼長さ120㎜以下・平均の燃焼長さ100㎜以下⑤ 耐空性審査要領
航空機の床の覆い、織物(掛け布、布張りを含む)、座席クッション、詰め物装飾及び非装飾用覆布、調理室備品、断熱用吸音用材及びその覆い、エアー・ダクト、結合部及び端末部覆いが適用範囲となる。
【試験方法】
試験片を垂直に保持し、下側のバーナーにて着火し、炎上時間を測定する。
【判定基準】
自己消化性平均炭化長150㎜以下、平均残炎時間15秒以下、滴下物の落下後の燃焼時間3秒以下
このように難燃規格には様々な種類がございます。
弊社では、用途にあわせて各種難燃規格に適合した難燃ウレタンフォームをご提案させていただきます。
2. 難燃ウレタンフォームの種類
難燃ウレタンフォームにはメーカーごとにラインアップがございます。
以下にその種類を紹介いたします。
1) カームフレックスFシリーズ
カームフレックスFシリーズは、UL94に合格し(F-4LFは相当品)吸音性能に優れた特性を持っています。
またF-2Gはハロゲン難燃剤を使用せずにUL94 HF-1に合格しています。
- FMVSS合格品:F-2、F-4、F-4LF、F-6、F-9L、F-9M、F-80
- UL94HF-1合格品:F-2、F-2G、F-6、F-80
- UL94HBF合格品:F-4、F-9L、F-9M
カームフレックスFシリーズは、難燃性だけでなく、吸音性能にも優れています。
この吸音性能については、下記ページにて詳細に説明しています。
2) UEIシリーズについて
UEIシリーズは、従来のリン・ハロゲン系の液体難燃剤を用いたエーテル一般低燃焼性フォームと比較して、次のような特徴をもっています。
- 低燃焼性が優れている
- 耐熱性が優れている。リン・ハロゲン系の難燃剤を添加したフォームは、それ自体が分解しやすく、フォームの老化を促進する傾向がありましたが、UEIシリーズは化学的に安定な特殊難燃剤を使用していますので、特に耐熱性が優れます。
- 初期の難燃性能を維持します。
長期間および高温雰囲気下における使用条件でも、難燃剤の飛散がないため、難燃性能を維持します。 - 軽量化が可能です。従来の難燃性ウレタンフォームを低密度にした場合、硬さの低下かつ燃焼性能の低下がみられましたが、UEIシリーズは諸性能を維持しつつ、低密度化が可能です。
- FMVSS合格品:UEI、UEI-3、UEI-5、UEM-35G
- UL94HF-1合格品:UEI、UEI-3
① NKフォーム
NKフォームとは、UL94HF-1認定の自己消化性ウレタンフォームです。
その特性から、様々な分野の産業資材として利用されています。
主な用途:断熱・結露防止・吸音・パッキング・その他分野に使用
- 家電関係:クーラー、クリーナーまわり、その他
- 自動車関係:カークーラーまわり
- 産業建設関係:エンジンルームの吸音
- コンピューター:キャビネット内の吸音、データセンターのラック周辺の隙間埋め
- コピー機:キャビネット内の吸音
3. 難燃ウレタンフォームの用途について
難燃ウレタンフォームは、難燃性が必要とされる様々な産業分野で使用されています。 下記にその用途事例を記載します。
裁断加工 | 材料を二次元形状に加工することができます。 正方形や長方形などの直線的な形状に裁断することは可能です。 |
自動車業界 | 自動車業界では車体の安全性確保のために難燃性が求められます。 車体の吸音材として難燃ウレタンフォームが採用されています。 |
建築・建材 | 難燃ウレタンフォームの中でも吸音性能があるものは、建築業界で建材として使用されるケースがございます。 防音室のパネル内などには吸音性能に特化した難燃ウレタンフォームが使用されています。 また最近では、データセンターのラック下隙間埋め材として、難燃ウレタンフォームをご採用いただいた実績もございます。 |
その他産業資材 | 弱電・建機の吸音材、鉄道車両用材料、自動車内装部材として、難燃ウレタンフォームが使用されています。 |
4. 難燃ウレタンフォームの加工方法について
弊社では、難燃ウレタンフォームを用途に応じた形状に加工することが可能です。
裁断加工 | 材料を二次元形状に加工することができます。 正方形や長方形などの直線的な形状に裁断することは可能です。 |
プレス加工 | クッキーを型で抜くように、打ち抜き型を用い、任意の形に加工することが可能です。 裁断加工ではできない複雑な形状の場合、このプレス加工により材料を加工いたします。 この加工方法では、型費が別途必要となります。 |
プロッター加工 | プレス加工では対応しきれない複雑な形状や、ロットが少ない場合、プロッター加工にてご対応させていただきます。 この加工方法では型費は必要ございません。 ※大ロットの場合は打ち抜き加工でのご対応となる可能性がございます。 ※材質によってはプログラミングカッターでの加工が難しい場合がございます。 つど営業担当者にご相談ください。 |
粘着加工 | 材料に粘着を施す加工です。 粘着加工をすることで、材料を何かに貼りつけることができるようになります。 また、異素材同士を貼り合わせることもできます。 |
貼り合せ加工 | 接着剤を用いて材料同士を接着することができます。同じ材料や違う材料同士の接着も対応しております。 異素材を積層することで、一定の機能性を付与することができます。 また、両面テープの品揃えもございますので、材料の片側ないし両側に両面テープを貼り付ける加工も可能です。 |
ホットメルト | 熱可塑性樹脂を用いた接着方法です。 熱で溶かした樹脂を接着剤として使用し、素材同士を貼り合わせることができます。 こちらも粘着加工と同様に、異素材同士を貼り合せる加工や、積層することが可能です。 接着剤や両面テープなどを使用しないため、VOCが気になる場合や、環境面に配慮する場合は、ホットメルトによる接着をご提案させていただきます。 |
切削加工 | NCマシニング加工、フライス加工により中ぐり、フライス削り、穴あけ、ねじ立て、リーマ仕上げなど多種類の加工ができます。 CADデータをいただくことで上記加工が実施できます。 トムソン型やプロッターでの対応が難しい複雑な形状をご希望の場合、こちらの加工方法にて作製いたします。 |
以上のように、当社ではお客様のニーズに応じたグレードをご提案し、用途に見合った加工方法をご提案することができます。