1.軟質ウレタンフォームとは
1-1.軟質ウレタンフォームにはどのような特長がありますか?
A-1.要求に応じて、適切な性状、物性性能が広い範囲で発揮できます。ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、整泡剤、着色剤、 その他配合剤の組み合わせ、混合割合、製造条件等を選択する事により、いろいろの用途に必要な性能が提供できます。
すなわち、軽くて、クッション性能、耐久性能、衝撃吸収性、断熱性、耐熱性、耐薬品性、吸音性が良く、着色自由度が広い等の特長が発揮されます。
クッション用途を例にとると金属スプリングや綿・フェルトに比べ、 軽くても高弾性でヘタリの少ない優れた「クッション性能」を発揮し、取り扱いがし易いという特長があります。さらに、ウレタンフォームを自動車座席に使用することで、軽量化による地球温暖化抑制にも寄与します。
最近では健康指向に応じて抗菌性や低反発弾性などの特徴ある性能も付与されています。
A-2.色々な形状の裁断、成形加工が出来ます。
軟質ウレタンフォームは直線や凹凸、局面裁断、くり貫き加工等が容易にでき、薄いシート状から定形品まで所定形状に自在に加工できます。又、熱プレスによる成形も可能です。
自動車用シートの様に自由なデザインと寸法精度、大量生産が必要な場合には、型内で発泡させる 「モールド品」も選択できます。
A-3.用途に応じて色々な接着・一体加工方法が選択できます。
フォーム同士の他、金属類、布、レザー等との縫製や接着剤などによる一体化が容易にできます。フォーム表面部を瞬間的に火炎にさらして熔かし、ウレタン接着剤層を形成させて貼りあわせる「フレームラミネート加工」は風合いと生産性を改良できます。
以上の様に軟質ウレタンフォームは他のプラスチックフォームや同類用途の繊維材 (綿・フェルト類)、スプリング等に比べて大きな特長が発揮できるので、自動車をはじめ家庭日用品から産業資材、建築資材迄様々な用途に使用されており、現在も品質改良と用途拡大が続けられています。
1-2.低反発弾性フォームとはどのようなものをいうのですか?
軟質ウレタンフォームはバネの様な「弾性」と粘土やガムの様な「粘性」を併せ持つ「粘弾性体」です。低反発弾性フォームは低反発フォームとも言われますが、軟質ウレタンフォームの一種であり、特殊な分子構造に設計され、「弾性」を抑え「粘性」を上げたフォームです。
気泡が連通し、衝撃吸収性があり、圧縮したのちに外力を取り除いた際、ゆっくりと元に戻る性質があります。
枕・寝具・椅子等に用いる場合、局部的な圧迫がなく体圧が全体に分散されるので感触が良いばかりで無く、血流阻害や床擦れ防止に効果的として近年需要拡大中ですが、ほかに精密機器の衝撃吸収材にも利用されています。
この種のフォームは低温域で硬くなる傾向がありますが、冬場など一般の生活水準にても硬さの変化が許容可能な分子設計となっています。
JIS K 6400の反発弾性率(鋼球落下時の跳ね上がり高さの落下高さに対する%)が40%程度の一般フォームに比べ、15 %程度以下の反発力を著しく小さくしたフォームが一般的です。
他方で「弾性」を上げ、「粘性」を抑えた軟質ウレタンフォームは「高弾性フォーム」又は「高反発フォーム」と呼ばれ、反発弾性率では50~75%程度のものが、バネ感の高い高級クッションに使われます。
2.燃焼性と防火・消火について
2-1.軟質ウレタンフォームは燃えやすいものですか?
軟質ウレタンフォームの発火点は約410℃であり、木綿、新聞紙、松材等の天然材料や、アクリル・ナイロン等の合成衣料用繊維、ポリエチレン・ポリ塩化ビニル、ポリスチレンフォーム等のプラスチック製品とほぼ同域を示します。従って、これらと同様に、着火源無しで自然に発火するものではありません。
近年では技術が進み、燃えにくくした製品も開発されておりますが、近くに着火源もしくは発火源があると全く燃え出さない訳ではありません。
軟質ウレタンフォームは着火した時、初期消火に失敗すると、わら・綿、紙・糸類、木材、他のゴム・プラスチック及びフォーム等と同様に燃焼が拡大する危険性があるので、共に消防法で「指定可燃物」に指定されています。火気を近づけない事と、所定量以上の大量保管時には「指定可燃物」の規定に従って下さい。
2-2.軟質ウレタンフォームに火がついた場合、どのように処置したらよいですか?
消火には水が最も効果的なので、軟質ウレタンフォームの火災には直ちに多量の水をかけて下さい。もちろん初期消火の時点では粉末消火器などを使用することも効果的です。
ただし、この場合、内部に火種が残っていることもありますので、更に多量の水をかけておいて下さい。
また、軟質ウレタンフォームを大量に扱っている場合、火がついた際には直ちに消防署へ連絡して下さい。
2-3.温水や蒸気の配管を軟質ウレタンフォームで巻いたり、覆ったりする場合、火災の危険性はありませんか?
温水の温度は普通100℃を超えることはなく、その温度は軟質ウレタンフォームの発火温度(約410℃) よりもはるかに低い温度ですから、自然に燃え出す危険性はありません。しかし、このような状況下で軟質ウレタンフォームを長期間使用している場合は劣化の恐れがありますので、蒸気配管のカバーとしては使用しないで下さい。温度が50℃~60℃以下の温水配管のパイプカバーとして使用されることを推奨いたします。
2-4.軟質ウレタンフォームにたまる静電気の火花によりウレタンフォームが発火することはないでしょうか?
軟質ウレタンフォームは電気伝導性が低く、摩擦により容易に静電気がたまりますが、静電気のエネルギーは非常に小さいのでフォームを発火させる可能性は極めて少ないものです。しかし、軟質ウレタンフォームを揮発性の引火点の低い溶剤を含む接着剤で貼り付けする場合等では、溶剤蒸気に静電気の火花が引火し、これがウレタンフォームに燃え移ることがありますので、注意が必要です。
引火防止の為には、接着剤には難燃性溶剤系を使用し、又、シンナー、ガソリン、ベンジン、アルコール等の低引火点溶剤を液体又は蒸気でフォームにしみこませたり、近接させる事は避ける (作業所内の可燃性溶剤の蒸気濃度を下げる)、加湿等による静電気発生抑制や除電をする等の対策が必要です。
3.衛生・安全性について
3-1.軟質ウレタンフォームを使用した製品は臭いがしますか?
軟質ウレタンフォーム自体は本来臭いは少ないもので、通常では気になることは殆どありません。一方、軟質ウレタンフォームを使用した製品の場合、マットレスを例にとると、ウレタンフォームのほかにカバー材、接着剤、包装材等の他材料が組み合わさっており、これらの臭いが気になるケースが稀に有るようです。軟質ウレタンフォームは連通した微細セル構造(気泡)であり、樹脂の表面積が極めて大きいために、 接している他の材料や直接さらされている雰囲気等に異臭気があればこれらが容易に「吸着」され、使用場所に開放した時この臭いが「放散」される性質があります。
従って、複合材料のほか、保管場所にも相応の低臭気条件を選択することが必要です。
もし、臭いで違和感がある場合、風通しの良い日陰に2~3日放置しますと、殆ど感じられなくなります。それでも臭いが異常と感じられる場合は、ご面倒でもその製品の販売元又は製造元にご相談下さい。
3-2.軟質ウレタンフォームを口に入れたり誤って飲み込んだ場合、 どうすればよいですか?
一般の生活用品として製造されているフォームであれば、少量のウレタンフォームを誤って口に入れ、又、飲み込んだとしても生理的な影響は考えられませんが、気道に詰まると呼吸困難になる恐れがありますので吐き出して下さい。万一飲み込んだ場合は、医師の診察を受けるようにして下さい。特殊用途向けに、特別処理された軟質ウレタンフォームにつきましては、製造元の指示に基づいて下さい。
3-3.軟質ウレタンフォームを食品の梱包材や、おもちゃに使っていますが安全ですか?
特に安全性が要求される用途に使用する軟質ウレタンフォームは用途に応じた衛生・安全基準に適合したものを使用しています。食品梱包用の軟質ウレタンフォームには、食品衛生法(合成樹脂製の器具又は容器包装材:昭和57年厚生省告示第20号及び平成6年厚生省告示第18号)の規格基準に、また、おもちゃの用途には食品衛生法(おもちゃ: 昭和47年厚生省告示第257号)の規格基準にそれぞれ適合したものが使用されています。
3-4.軟質ウレタンフォームが直接皮膚に接触した場合、皮膚に影響はありませんか?
一般の生活用品として製造している軟質ウレタンフォームによる皮膚への影響は考えられません。なお、特殊な用途に使用される軟質ウレタンフォームの取扱いにつきましては製造元の指示に基づいてお取り扱い下さい。3-5.「ウレタン」と呼ばれる化学薬品がありますが、「ウレタンフォーム」と関係がありますか?
通称「ウレタン」と呼ばれる有害性薬品があり、「ウレタンフォーム」と名称が似ている事から混同され 「ウレタンフォーム」までも有害であると誤解される事がありますが、高分子量の「ウレタンフォーム」とは全く別の化学薬品であり、勿論、この薬品は「ウレタンフォーム」には含まれておりません。化学薬品の「ウレタン」は、化学名では「カルバミン酸エチル」 と呼ばれる白色結晶のもので、化学合成の中間原料、殺虫剤、 燻(くん)蒸剤の溶解補助剤、動物麻酔剤等に用いられている様です。
一方で、労働安全衛生法では、発癌性の疑いがある「有害性の化学薬品」に位置づけられているもので、「ウレタンフォーム」とは全く別の物です。
4.環境への取り組み

4-1.軟質ウレタンフォームはリサイクルできますか?
リサイクルできます。軟質ウレタンフォームの主なリサイクル法は、チップ状に粉砕したフォームに接着剤を噴霧させ圧縮成形する、チップフォーム(リボンデットフォーム)と呼ばれるブロック製品ですが、金型を利用するモールド製品 (チップモールド)も多量生産され、自動車部品や家具をはじめ、様々な分野で広く利用されております。
しかし、発泡工場や加工所で発生する汚れのない断材利用が大部分であり、汚れている使用済みフォームは衛生上の問題からマテリアルリサイクルには至っておりません。
また、軟質ウレタンフォームのリサイクル技術としては、マテリアルリサイクル以外に化学的に分解し原料として回収する方法、 環境に配慮して、還元炎を用いて燃焼させエネルギーとして回収する方法などが開発され、最近では、これらの技術を中心に実用化の検討が進められています。
4-2.使用済みの軟質ウレタンフォーム製品はどのように廃棄すればよいですか?
自治体により廃棄方法が異なるので、各市町村条例で決められた方法に従って処分して下さい。東京都の条例では、使用済みの軟質ウレタンフォームは、ある程度に細かく裁断し、45リットル入りのゴミ袋に詰めて指定のシールを貼った後、決められた日に集荷場に出す事になっています。
大きい状態、あるいは大量に廃棄する場合は事前に届け出が必要になりますので、各市町村が発行するゴミの出し方についての配布資料に従って処分して下さい。